映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョセフ・ロージー監督「緑色の髪の少年」3158本目

タイトルとビジュアルに惹かれて視聴。(フランクリン・J・ハフナー監督の「ブラジルから来た少年」を思い出して期待)ジョセフ・ロージー監督の作品は「エヴァの香り」しか見たことない。イザベル・ユペール大先輩の「エルELLE」のリメイク元だと聞いて見てみたので、直近の作品のほうのインパクトが強くてちょっと印象が弱かったけど、「緑色の髪の少年」はとても印象的な作品でした。

賢そうな男の子を中心として、子どもらしいファンタジックなイマジネーションもありつつ、彼の経験の背景にある苦いできごとをたどっていく、ミステリアスな構成になっています。彼の髪が緑色の期間は短くて、冒頭は坊主頭だし途中まで普通の黒髪です。制作年度からして、この子の両親がロンドンで亡くなった経緯は戦争に関係がありそうだけど、あえて明確にしないのは、あくまでも「ある戦争による孤児」として一般化するのが映画の主旨だからかな。

牛乳屋や水道局が自分たちのせいじゃないと訴える場面、優しい先生が子どもたちに自分の髪の色を言わせてみる場面、孤児たちに励まされる場面、いじめっ子たちに捕まる場面など、それぞれが象徴的。そこから引き出されるのは、普遍的な差別ということの本質なのかな。(そう考えるのは、つい最近、茶色っぽい地毛を黒く染める、みたいなばかげた校則の撤廃を考える番組を見たからか)

いい大人たちに守られて、少年がこれからすくすくと育ちそうな感じでよかった。

この少年がその後デヴィッド・リンチとかのクセの強い映画にたくさん出るディーン・ストックウェルだとは(映画とは関係ないか)。

緑色の髪の少年(字幕版)

緑色の髪の少年(字幕版)

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