映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

大森一樹監督「風の歌を聴け」3163本目

「ドライブ・マイ・カー」を見たので、昔の村上春樹原作作品を見てみたくなりました。「ノルウェイの森」は(なんか違うなぁ)と感じたけど「バーニング」は面白かった。この作品は初めての映画化だというだけでなく、1979年の出版からわずか2年後の1981年、監督は大森一樹でアートシアターギルドという、当時のアングラ感の強い制作体制で、どう仕上がっているか興味あります。

「僕」=小林薫、「女」=真行寺君枝は当然のようなキャスティングだけど、ジェイのマスターに坂田明ってのはATG的すぎる上、鼠を巻上公一という大胆なキャスティングは意外とはまってるのかもしれない。キャラと圧が強くて、苦労人というよりはお坊ちゃんっぽいこの感じ。ヒカシューは嫌いだったけど、声も通るし、彼は役者でやっていけたのかも。(意外と映画に出てるな、知らなかったけど)

何より不思議なのは、小林薫は村上春樹の主人公のイメージに近いんだけど、独白をそのまま流すとATG映画(昔のアングラ映画というか)そのものだということ。フリージャズを流すこともサックスプレイヤーの坂田明を出演させることも、たとえば新藤兼人作品でよく邦楽を使ったりすることを考えれば、様式をなにも外れてない。村上春樹ってそもそもはアングラの世界だったのかな…。考えてみれば、春樹作品には癒しはないし、主人公があんなに筋肉質の超イケメンってこともないので、「ドライブ・マイ・カー」のほうが異端の映画なのかもしれません。

混乱してきた…。

真行寺君枝のアンニュイでクールな感じ、ATGっぽい…。このくらいの年齢の女性って、自然にきれいに咲いた花みたいだな。自分を美しく見せようとする必要がないというか、美しさを持て余してるようなかんじ。今の若い子も生物学的に同じはずだけど、テレビとかで見る子たちは完成されすぎてる気がする。

この映画はまさに村上春樹作品なんだけど、世の中をハスに構えてニヒルに見ている感じがちょっとイヤミで、あと、なんともいえず…面白くない。(すみませんこんな言い方)

でも、真行寺君枝がきれいで、LPレコード店とドリーム号が懐かしくて、カリフォルニア・ガールズはやっぱり名曲で、あと、巻上公一が思ってたほど嫌いじゃなかった。