映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

月川翔 監督「君の膵臓をたべたい」3177本目

<ネタバレあり>

一世を風靡してたなぁ。4年前の作品。北村匠海は「アンダードッグ」でアクの強い演技を見たけど、このときは内向的だけど芯が強い少年の役だ。浜辺美波が演じる桜良はひたすら明るくて可愛い女の子。女の子が桜良に感情移入する少女マンガのような作として見始めたけど、作者は実は男性なのね。タイトルがなんとなくネットの世界っぽいし、よく見ると内気な少年が理想の妖精と出会って失うという、アニメーション作品で見る構造なので、腑に落ちる部分もあります。

愛してるけど愛してるって言えない。泣きたいけど泣かない。しんみりとお別れしたくないから、間近に迫っている死が、わざわざ突然にくる。それは、瞬間の美しさ、切なさを最大にするためだ。「愛と死を見つめて」とか「散り行く花」みたいな大昔のロマンチックな映画みたいに、純真で美しい世界。つまり、価値観ってじつは100年前も今も同じなのかもね。リアリティがあまりなくて、作者の思いとか妄想とかで作り上げられた印象の作品を私は”ファンタジー”と呼ぶことがある。これは良い悪いってことじゃなくて、社会的な自分を切り離して、まっさらな気持ちで作った人の世界に浸ってみることで良さがわかる作品ってこと。この作品はとても純粋なファンタジーだと思いました。