映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マーヴィン・ルロイ 監督「悪い種子」3188本目

<ネタバレあります>

映画の紹介文にすでに、「8歳の少女が殺人事件を起こす」と書いてあるし、ジャケット写真を見るだけでネタバレ感がありますが、少女の母がやけに気にかけている連続殺人犯の女性の話やタイトルから、この作品のテーマが”犯罪者の遺伝子”だということもわかってきます。

すごくスリリングで面白い。犯罪の原因として「遺伝」をテーマにするのも、彼らの演技も。遺伝を単純にとらえるのはとても危険だし不正確で、犯罪傾向の遺伝子は、血液型の遺伝子みたいに単純な計算で発現を予測できるようなものじゃないと思うけど、今ならこれほどあからさまに犯罪の遺伝を描く映画は作られないんじゃないかな。だいいち、犯罪者本人であっても刑を受けて服役することで更生を目指すわけなので、原因が遺伝子だとか言ってしまったら、子孫どころか本人の更生もありえないような話になってしまう。

放送禁止用語がドカドカ出てくる昔の映画を見たようなムズムズ感があるけど、白黒映画の時代の、丁寧に作られた作品で見ごたえがありました。

終わった後に出演者たちが出てきて挨拶をするのは、「これはフィクションです」という強いメッセージなんだろうな。実際、これがあることでお嬢ちゃん役の子は学校でいじめられるリスクが少しは減ったかも、という気がします。

悪い種子(字幕版)

悪い種子(字幕版)

  • ナンシー・ケリー
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