映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロバート・エプスタイン 監督「ハーヴェイ・ミルク」3203本目

ショーン・ペンが彼を演じた映画を見てけっこう衝撃を受けたのですが、これは当人に関するドキュメンタリー。彼自身が暗殺されたことを市のスポークスパーソンが発表する場面から始まります。

ショーン・ペン、顔が似てるわけじゃないのに、印象がソックリです。顔じゅうで笑う表情が、政治家っぽくも感じられる。演技力ってやつだなぁ。ミルク氏は、すぐそばにいた人たちからは「かんしゃく持ちで難しい人だった」というコメントもありました。熱くてちょっと直情的で正義感にあふれた男、という感じかな。ゲイではないけど彼をきちんと評価していて、最初に殺害されたマスコーニ市長のことも、もう少し知りたいな。

加害者の段・ホワイトのことを想像してみる。どうも頼りないけど、悪いやつとか乱暴なやつと言う人がいない。彼は保守的な旧世界の代表のようなものだったのかもしれない。先住民を殺すのは当たり前だ、奴隷を殺すのは、ゲイを殺すのは、重い障害をもつ人を殺すのは。だって戦争では当然のように敵を殺せと国家命令を受けて、命がけで戦ってきたのだ。…軽い刑で済んで出所した後、戻ってきたロサンゼルスに居場所を見つけられず、彼はガレージで自殺をとげる。重い刑をくらっていたら刑務所のなかで長生きしたかもしれない。どっちも辛いと思うけど、彼にこのような死をもたらしたのは保守的な旧世界だと思う。旧世界と相いれない新世界が台頭したときに、必ず生じるひずみをどこで解決するか。解決できないと、ミルクとホワイトだけじゃなくて市長まで死ぬのだ‥。ちょっと単純化しすぎましたが。

自由のために命がけで戦った人たちがいたから、今のカリフォルニア州がある。日本はどうなんだろう?まだまだ勉強が足りません…。

ハーヴェイ・ミルク(字幕版)

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