映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

キム・ドヨン 監督「82年生まれ、キム・ジヨン」3224本目

1982年生まれということは、現時点で39歳。原作が書かれたのは数年前としても30代後半、し烈な学歴社会のなかで塾にも通い、がんばって進学して就職して、結婚して出産してまだ子どもが小さい、という女性像は日本でも共感する人が多そう。この作品の前に見た「チャンシルさんは福が多いね」のチャンシルさんは、ジヨンよりちょっぴり年上だけど、結婚せずに打ち込んできた仕事を突然失って、家族の縁もこんなに強くない女性。みんながんばってる。泣きそうになりながら。

ひとつ言えることは、家庭に収まって落ち着いてしまった女性の無力感は圧倒的で、自分ひとりの力では事態を切り開くのがとても難しいということ。いじめっ子がいる学校を転校することが自力ではできない児童生徒みたいになってしまってる。

それでも、病人を病院に来させるのが一番の障壁だというのと同じく、自分でなんとかしようと思わない限り、事態は動き出さない。SNSでデマを読んだり拡散したり、知りもしない人たちを攻撃したりしててはダメなのだ。

私が勤めてた外資系企業の韓国オフィスでは、15年前に事務の女の子の夫が「主夫」をしてたという事実もあるので、この映画だけ見て「韓国の女性の立場は日本より厳しい」といえるわけでもない。進歩的なアクションがとれる個人もいるけど、それに対する反発もきっとすごいんだろうな。でも、あっち行き、こっち戻りしながら、少しずつ世の中が変わっていく。