映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロバート・シオドマク監督「幻の女」3230本目

Amazonプライムに勧められて見てみる。アリバイを証言してくれるはずの、名も知らない女…。なかなかスリリングな紹介文に好奇心をそそられます。

ガラガラの酒場ではカウンターで2人で飲んでいたのに、バーテンダーは一人だったという。二人で乗ったタクシーの運転手も。幻の女と同じ帽子をかぶって舞台で歌っていた歌手も、誰もその「幻の女」の存在を証言してくれない。はめられてますね~、明らかに。準備が良すぎてリアリティ(現代の映画における常識上の)が薄いですね。

彼を救おうとするのは、美しく有能な秘書。開店から閉店まで3日間も酒場で粘って、バーテンダーを青ざめさせます。すでに有罪判決が出ているのに彼はシロだと信じて「非公式に協力する」という刑事の存在も、今の感覚だと「ありえないからその刑事はインチキだ!」となりそう。

フランチョット・トーンはこの間見たビリー・ワイルダー監督の「熱砂の秘密」のヒーローだ。今回は重要だけど悪い役。クレジットはトップだけど登場は後半です。「熱砂」ではそれほど二枚目じゃない気がしたけど、この作品では冷たげな知性派。これがまた、ぴったりなのがすごい。

犯人が時折、ひどい頭痛に襲われるのが、ジキル→ハイドへの転換のしるしのように描かれてるのも、今みると「?」という感じだけど、鋭角的な構図が目を引いたり、サスペンスフルな仕掛けがたくさんあって楽しめました。昔のこういう映画って、全部好きだわ。

幻の女(字幕版)

幻の女(字幕版)

  • フランチョット・トーン
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