映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

坂東玉三郎監督「外科室」3232本目

これもずっと見てみたかった。最近映画はVODでばかり見てるけど、久々にTSUTAYAの宅配レンタルでまとめて借りた中の1つ。

ストーリーは知った上で見る。画面は一貫して美しく夢みるような感じ。ただ、寝て見た夢みたいに、ぼんやりとした気持ちになってしまう。インパクトがないのかな。蛇のあやしさも、庭園の日本画家の登場のふしぎも、手術台の上の吉永小百合も、演出はあくまでも控えめ。構図とかカメラの使い方もごくシンプル。

50分という短さ。引き延ばそうとしなかった潔さがいいと思う。もっと短くても良かったかもしれない。濃厚な25分だったら、もっと見たいと思っているうちに終わって、何度も何度も見る作品になったのかも。

これってもしかしたら究極のエロスの物語、なのかな。何年も思い続けて、愛しい人の胸の中で彼の握ったメスで死ねるなんて、これほどのエクスタシーはない、みたいな。

そういう情念(美女が蛇に化けるような)って歌舞伎の真骨頂だと思うけど、あえて映画で作ってみたかったんだな。興味深い作品でした。