映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

パトリック・ブシテー監督「つめたく冷えた月」3246本目

1991年のフランス映画だけど白黒。フランスといってもカトリーヌ・ドヌーヴが出るような美しい謎めいた映画ではなく、イザベル・ユペールが出るような皮肉キツイ映画でも、ジェラール・ドパルデューが出るような活劇でもない。…ちょい汚めで屈託のないおっさんたちと不機嫌な女…もしやと思ったら原作がチャールズ・ブコウスキーだ。だから借りたんだな、これ。偽悪的、露悪的だけど、どこか誰よりもキレイな感じがして、ブコウスキーの書いたものは好きなのだ。VODに出てない作品も、こうやって時々まとめてレンタルすれば見られてうれしい。

それにしてもアメリカ在住だったブコウスキーの作品がなんでフランス映画なんだろう。彼が敬愛したセリーヌがフランスの作家なので、こういうテイストの作品に理解が深いお国柄なんだろうか。

この映画は、デデとシモンという飲んだくれの中年ふたりの他愛ない夜の生活を描いてるんだけど、二人が病院から運び出される死体を盗んだときのことを、シモンは大切に思い出している。若くて美しい、傷ひとつない体に彼は恋をしてしまったのでした。彼女を最後に流しに行った海の帰りにずっと車の中で涙を流し続けるシモン。大きくてむさくるしくて酒浸りだけど、二人の多感な少年ってかんじですね。しょうもない奴らだけど、憎めない。

やっぱりセリーヌも読んでみなきゃな…。

つめたく冷えた月 [DVD]

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  • パトリック・ブシテー
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