映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

関根光才監督「生きてるだけで、愛」3255本目

原作の本谷有希子といえば「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」が面白かったので、小説や戯曲を何冊も読んでみた時期があったな。久々の映画化か。(「乱暴と待機」は見てないや)

感想をいうと、すごく良かった。趣里はぱっと見、岸井ゆきのにちょっと似てるけど、あまりにも寧子だ。緊張して言葉をひとつひとつ口にするときの感じは、エレカシの宮本みたいだな。というか感情の動きは私と同じだ。。。すごく優しい人たちに囲まれて、緊張の極致になって、帰り路にずっとぶつぶつつぶやいたりする。口と動きに出ないだけで同じ。自分なんて生きてるだけで…って思ってるのも同じだ。私と寧子だけなのかな、他にもたくさんいるんじゃないかな。小さいころは出せてた気がする。だんだん、物心ついてしまったのだ。もやもやしていて正体の見えないものを、出せたらいいのにな。出せない津奈木や私が出してる寧子にあこがれるのだ。原作者も「出せる人」なのかもしれない。

出せてしまった人の軌跡として大事な作品のような気がする。変な比較だけど、「僕が飛び跳ねる理由」を読んだときみたいな感動もある。生きづらいと思ってるいろんな人に見てほしいな。