このシャイな男が、自分の痛みを文章にして世に問うたことは、多分アメリカだけでなく世界の文壇を変えたし、世界中の傷ついた男たち(女性も)を少し救ってきたんだろうな。私も若いころに「ライ麦畑」や「ナイン・ストーリーズ」を読んだ覚えがある。
あっという間に筆を折ってしまったことは、胸が痛くなるくらい残念だけど、そのとき隠遁生活に入らなかったら、きっと彼はジョン・レノンみたいに崇拝者に殺されてしまったんじゃないかな。その後の人生がおだやかで幸せであってくれたら、と思います。
彼が、戦争に行って病むほどの経験をしないままだったら… もっと甘ったるい小説を書いていたかもしれないし、鋭い小説を10冊以上書いたかもしれない。What if?を考えてもしょうがないけど。失われた少年を恋しく思うような気持ちになってしまうのでした…。