映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャック・ドゥミ監督「ロバと王女」3280本目

年を越えて「ひとりジャック・ドゥミ/アニエス・ヴァルダ特集」は続く。

この作品は「ジャック・ドゥミの少年期」で彼が作っていたロマンチックなアニメーションの実写化という感じ。内容はディズニーワールドです。ジャック・ドゥミって映画監督にならなかったら、実家の自動車工場を継ぎつつ、アニメーターになったと思う。シュヴァンクマイエルみたいに執念深くストップモーション・アニメを作り続けて、その道で不世出の巨匠みたいになったんじゃないだろうか。

デジタル・リマスター済の精細映像でカトリーヌ・ドヌーヴは妖精みたいに美しいし、ドレスの造形や彩色も素晴らしい。強いていえば夢みたいな舞台装置が、引きで撮るとちょっと寂しく感じられるので、もっと接近して(それこそジャコット少年の覗きカメラみたいに)撮ってくれたほうがドキドキしたかも?なんとなく私はそんな風にファンタジー感をもっともっと出してほしいと思ってしまうけど、フランスでは大ヒットしたらしい。少年時代や妻の思いを見てしまったので、なぜか身内みたいにドゥミ監督の成功をうれしく感じてしまうのでした。

「少年時代」で晩年の監督は、「以前は映画を監督したりしてたけど、今は絵を描いたりして過ごしてる」と言ってました。ときどきはさみこまれる、マットで色彩が印象的な絵は彼の作品なんだろうな。私のすごく好きなタイプの絵ばかりだったな…。

ロバと王女(字幕版)

ロバと王女(字幕版)

  • カトリーヌ・ドヌーヴ
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