映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アニエス・ヴァルダ監督「落穂拾い」3303本目

ミレーの名画が「落ち葉拾い」じゃなくて「落穂拾い」だと気づいたのは割と最近。それでも、単に刈り取った人たちが残りを拾い集めて出荷するくらいに思ってました。この作品はミレーの有名な名画について探る作品ではなく、畑のじゃがいも、パン屋の朝のごみ箱や市場で棄てられた野菜を拾う人たちに焦点を当てたもの。今ならSDGsのような、限りある食料を無駄にしない、あるいは落穂を残さず刈り取るテクノロジーの進化といった流れで語られそうな内容かもしれないけど、ヴァルダ監督の関心は常に「人」です。彼女は拾う人たち、それを食べたり調理したり、積み重ねて何かを作ったりする人たちの暮らしや、彼らの先にいる、フランス語を毎晩習っている人々のことが気になってたまりません。

この映画は、前提がまったく理解できていなかったので3回見てやっと全容が把握できましたが、見れば見るほどヴァルダ監督の愛あるまなざしに惚れるよなぁ…。こんなに愛にあふれた人が自分の近くにいたら、それだけで世界はちょっといい場所になりそうな気さえしてきます。

さて、あと何作か、レンタルDVDで見られるものを調達してみよう。