映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルイ・シュワルツバーグ 監督「素晴らしき、きのこの世界」3330本目

これ公開時からすごく気になっていました。キノコを筆名にしているほどキノコ好きの私は、この作品の感想を書くのにふさわしい人物と言えよう。(椎田恵子でも松田恵子でもよかった)

冒頭、男性が「Recycle me, that’s the way of the nature」って言うのがいいですね。毒のあるキノコは人も動物も殺すし、毒がなくても暗い森で死体を分解する謎の生物。自分も森で死んだら分解されてキノコの一部となるのだわ。

キノコがどんどん大きくなるタイムラプス映像は、そんじょそこらのCGよりずっと”謎の生物”感が強い。なんとも言い難い怖さもある。これだけの実写映像を撮って集められたから、映画として作品にできたんだろうな。

それにしても、この地味なドキュメンタリーがわりと大々的にメジャーな映画館で全国公開されたのは不思議。コロナに効くワクチンがキノコのおかげで生成できるかも、みたいな部分が一般受けすると思われたんだろうか。オーガニックなものには副作用はないと信じてる人たちがやってる「全米キノコ協会(ないか、そんなの)」のプロパガンダ映画のような趣きさえあるんだけど。(映画の最後にURLが書いてあったらクリックして入会してしまいそうだ)日本ではキノコは体にいいし鍋物には必須だし、普通によく食べるし、霊芝や冬虫夏草の薬効も知られてるので、こんな風にキノコを語られてもちょっと笑ってしまうけど…。欧米の人たちはキノコを食べたことがないんだろうか。

キノコが偉大なことは今さらながらよくわかったので、私もキノコを名乗り続けるからには、いつかどこかでマジック・マッシュルームを体験してみるべきだろうか。あんまり丈夫なほうじゃないので、やるならドクターの監視下でやりたいけど、多分そんな場所はないだろうな。

いずれにしろ生物はすべていつか死んで、メタバースじゃなくて「マイクロバース(菌類の世界と訳されてたな)」に入っていく…生まれて初めて今、土葬の人たちがうらやましく思えました。いや、焼かれてもいいけどできれば遺灰は里山にまいてほしいなぁ。