映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督「イゴールの約束」3332本目

1996年に作られた、ダルデンヌ兄弟の最初の長編作品。主役の少年がジェレミー・レニエなんだよなぁ。この間見た、ギャスパー・ウリエル主演の「イヴ・サンローラン」で彼を守り続けた中年男ピエールを演じてたのが彼だ。26年前はうら若き少年だったのだ。

その少年が、とてもいい。意志が強くて現実的な少年だけど、父親と違ってまだまっすぐな心を持ってる。ダルデンヌ兄弟の作品で、まっとうな人間はだいたい試練にみまわれる。不法労働者のアミドゥが足場から落ちて大けがを負ったとき、父親は保身のためそれを隠ぺいする。息子イゴールはどうする?

ブルキナファソって公用語がフランス語なんだな。だったらフランスに出稼ぎに行こうと思うのは自然だ。この”不法移民”問題を考えたとき、200年前ならするっと行けたんだろうなと思ったり、アフリカから本人の同意なしにどかどか奴隷を買ってきてた国がどの口で不法移民とか言うのか、と思ったりする。

自分のすぐ足元でも、遠くの国でも、もう世界中のあらゆるところで人は理不尽な判断をして、誰かが打ちのめされてる。こういう映画ばかり見てるからか、世の中がだんだん良くなっていくなんて到底思えないんだけど、その中でも今この瞬間ゆるせない!と思うところにわずかながら手を差し伸べたりしながら、やっていくしかないんだよな。

それでも、ダルデンヌ兄弟の作品はこれからも見ます。

イゴールの約束(字幕版)

イゴールの約束(字幕版)

  • ジェレミー・レニエ
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