映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

テリー・ギリアム監督「12モンキーズ」3338本目

<結末にガッツリふれています>

1995年の映画。27年も前だなんて。たしかこの映画、かなり期待して公開直後に見た記憶がある。でも(テリー・ギリアム作品にありがちなんだけど)”世界観”に浸っていても、理解できた気はしなかった。

冒頭は「ラ・ジュテ」のまんまだ。少年が大人の女性を見ている。血が流れている。…男(ブルース・ウィリス)が現実に戻ってくる。体がぎりぎり入る大きさのカゴが重層的に折り重なっている、その一つで彼は目覚めて、パイプのようなもので別の場所へ送られる。この辺は「マトリックス」を思い出すわけだ。(近未来SFを見すぎた観客ってほんとに嫌ね、私のことだけど)

でも「ラ・ジュテ」になかったのは、世界を滅亡させた悪の団体の明確な存在や、彼がその退治というミッションを背負ってるってところですね。ラ・ジュテでは、男は過去と未来を見て戻ってくるだけの役割だったから、そこが違う。

ストーリーはうっすら覚えていて、精神病院のイカれたブラピ…この秀逸なキャラクターを他の映画でも見た記憶がある。時系列的にはこれは「セブン」の後だけど「ファイト・クラブ」よりは前か。ブルース・ウィリスが、頑強なのにどこか繊細ですごくいいのはいつものことで、マデリーン・ストウはすごく綺麗。

本物の悪者は他の場面に出てたのを思い出せないけど、あの髪型の男が飛行機に乗り込む映像をうっすら覚えてる。彼の隣に座ったのは、未来の研究所で一番印象が強かったあの人じゃないですか。ここはサービスショットというか、誰も見落とさない確実な仕掛けですね。しかし「I’m an insurance」って「救済保険」でいいんだろうか。「私は(コールが失敗したときのための)保険よ」ってのが本当の意味だけど、きっと口語で「I’m an insurance agent」のagentが省略されていて、表面的には「私の仕事は保険代理店です」という会話に見える、とかだろうな。ラスボスみずから備えてた感があってすごく気分のいい結末です。

残念なのは、空港ですでに赤毛のロン毛が生物兵器の口を開けて、検査官が吸入済という事実。その後世界をめぐる野望が絶たれたので、被害は狭い範囲で食い止められたか。でもコロナの現実を考えると、時間稼ぎにしかならない気もするな…。

「ラ・ジュテ」の視聴期限が切れそうになったおかげで、この映画も見直すことができて、なんだかすべて解決したようなすっきりした気分。あー見てよかった!

12モンキーズ(字幕版)

12モンキーズ(字幕版)

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