<結末にふれています>
1948年の作品。黒澤監督の「白痴」で女王然とした原節子に感動したので、彼女が華やかな役どころを演じてる作品を探してたどりつきました。吉村公三郎監督作品は「安城家の舞踏会」と「わが生涯の輝ける日」しか見たことがないけど、脚本はいつもの新藤兼人なので安定感を期待します。
冒頭、なぜか大学生の角帽をかぶった原節子に話しかける紳士は…話すとわかりますね、佐分利信だ。原節子は、(個人的には残念ですが)小津作品のいつものか弱い節子でした。ああ、もっと威張ってほしい…!
しかし、部屋がない、布団がないといって、今日知り合ったばかりの知らないどうしの男女を同室・ひとつの布団に案内する日本の昔の旅館…そして「僕はソファで寝るよ」とも言わず(※ソファなどない)同じ布団に並んで寝る二人。このときの我慢の限界が、佐分利信が彼女を家に家庭教師?として迎える動機となったのであった…ていうか原節子、このあと彼の書斎でのふるまいなどを見ても、ちょっとコケットですね~ 佐分利信のほうは、ダンディだけどちょっぴりイヤらしいおじさんの表情も見せます。
杉村春子は今回は”意地悪な姑”とかじゃなくて病弱な妻です。若くて美しい秘書に嫉妬するのが、今回の彼女の役割。嫉妬にくるって病院を抜け出して家に戻ってみたら、そのときちょうど夫は部屋で秘書に迫っているところだった…!
今までこれだけ上目遣いでキラキラとにじりよっていた彼女。「先生、いけませんわ」といくら言っても説得力が…。
最終的に家にあがった彼女。愛を貫いたのにすぎないけど、最後に今までで最高の上目遣いで先生にダッコをせがんだ彼女の表情を見ると、後味が…。
原節子史上最高の悪女かもしれないけど、キャラはいつものお嬢さんなので、私としてはやっぱり「白痴」の彼女が最高の大女優だったなぁ。
湯上りの原節子が使っていた乳液の瓶が、母が愛用してた資生堂「ドルックス」のガラス瓶だった…。