映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

川和田恵真 監督「マイスモールランド」3352本目

劇場公開は2022年5月6日だけど、NHKBS1で放送したものを録画して3月27日に見た。(Netflixみたいな感じ)メイキング映像まで見たよ。

クルド人問題だけでなく、近代史や政治には相当うとい私ですが、「風の電話」に出てくるクルド人の町は見たし、クルド料理店「メソポタミア」に行ったこともある。というか、難民支援のNPOを支援してるし、実は品川の入管に行って収容されている数名の方々と話したこともある。国と国の関係は複雑で、助けますと言いづらい事情もあるんだろうけど、私はとにかく自分の知る範囲で誰かが制度のために絶望したり病気になったり死んだりしていることがイヤなのだ。

それに、クルドに限らず、あらゆる世界の民族文化の色彩や意匠の美しさや(私から見た)珍しさが好きだということもある。コロナが落ち着いたら、また知らないところに出かけて行って驚いたり喜んだりしたい。私は、好きな人も嫌いな人もよく知らない人も、まあまあご飯を食べてまあまあ幸せに暮らしていてほしいんですよ。命がおびやかされたり食べられなくなったところからのひずみが世界に広がって、憎しみの連鎖を引き起こし続けてる。

この作品は、映画というよりNHKのスペシャルドラマ前後編のようで、なんとなく小粒な感じでした。主役の嵐莉奈の気品ある美しさや、奥平大兼の朴訥な感じは良かったけど、全体的にまだ堅い。でも誰かメジャーなメディアがこの題材のドラマを作って、世界中に見てもらうこと、つまりテレビではなく映画で公開することに意義がありました。