映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

手嶋悠貴 監督「フィッシュマンズ」3354本目

この感想もまた、自分語りに終始してしまいそう。すごく親密だったけど完全に距離を置いてからもう20年も経ってしまった世界に、一瞬で振り戻されたようで、めまいがする。

この映画ではフィッシュマンズ結成の頃からたどっていて、初期の元気なスカバンドの頃の音はまったく聞き覚えがないけど、トータス松本とユースケ・サンタマリアがスペース・シャワーでやってた「夕陽のドラゴン」のことはよく覚えてるし、「空中キャンプ」の楽曲はまさに私の記憶してるフィッシュマンズだ。あの時代、仲良くしてる夫婦がいて、ダンナの方は破天荒な雑誌の編集をやりながらパンクバンドをやってて、妻のほうは洋服屋をやってたけど、彼女がスピッツの次に「これ最高」って教えてくれたのがフィッシュマンズだった。20年経っても、フィッシュマンズと聞くと彼女が浮かんでくる。佐藤伸治が亡くなったと聞いたとき、なんで?と思ったけど、「空中キャンプ」はもう私のいう”死に死にした”音楽の領域にあるような気がして、あっちの世界への一線を超えちゃったのかな、避けられない成り行きのような感じもした。(”死に死にした”は”生き生きした”の逆で、天国で聞こえてきそうな夢のような浮遊感のある音楽。映画でいえばライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの「ベロニカ・フォスの憧れ」で歌われる「思い出はそうやって作られる」とか)

夭折した小説家や画家にも似ている。魅力的で完全主義者で、見れば見るほど惹かれるけど、もういない。フィッシュマンズ、佐藤伸治を中心としたこの作品は、彼を愛する人たちの思いで構築されていたのでした。

映画:フィッシュマンズ

映画:フィッシュマンズ

  • フィッシュマンズ
Amazon