映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウェス・アンダーソン監督「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」3358本目

本当はこんなに長いタイトルなんだ。「フレンチ・ディスパッチ」というのは新聞の名前なのね。

冒頭の、階段が複雑に交差して複数の建物を経て登っていくところ、ジャック・タチですね。レオナール・フジタがネスカフェをフランス風に発音した名前の刑事シェフになってる。誘拐犯の逃走劇のアニメーションはタンタンの大冒険だ。監督が持っている”フレンチ観”、日本人の私たちと似ていて共感してしまいます。これが本当にフランスなのかという点は、フランス人に訊いたら絶対違うって言いそうな誇張があるところが良いです。

看守をしているときのレア・セドゥの演技がフランシス・マクドーマンドになってるw やたら豪華な出演者がみんな、澄ましかえって監督の世界を生き生きと演じてるのが楽しい。シリアスだったり怖かったりする映画が多い世の中で、こういう「くすっと笑えてほんわかする作品」を真剣に作り続ける監督がいて、ほっとする。

エンドロールで流れる、雑誌の表紙イラストの数々も、ちゃんと見ないと勿体ない。ウェス・アンダーソン監督って「夢見る完全主義者」って感じがするなぁ。(ジャック・タチと同じだ)

初めてこの監督の作品を見たときは「作り過ぎてて不自然」ってところばかり気になったけど、だんだん素直に楽しめるようになってきました。次の作品も楽しみです。