映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

エドガー・ライト監督「スパークス・ブラザーズ」3364本目

「アネット」に続いてこれも初日に見てきました。でも劇場の観客はパラパラ。あっちはアダム・ドライバーやマリオン・コティヤールが出てるし、カンヌで受賞してるし、上映館が少ないのでけっこう埋まってたけど、こっちは人気のあるバンドでも難しい音楽ドキュメンタリーをTOHOシネマズ六本木に見に行ったんだもんなぁ。

アネットの方に書いたように私は40年を超えるスパークスのファンなんだけど、彼らの両親や小さいころの写真なんて見たことなかったし、いくらカリフォルニア出身だと聞いてもピンとこなかったのが、この映画を見ていたら彼らが毎日通ってるカフェとか自宅の雰囲気とかがいかにもおおらかなカリフォルニアらしくて、やっと納得できたような気もします。

過去の全アルバムの全曲を演奏するという無茶なライブは、すべて無料で全世界にライブ配信されたのを夜更かし(早起き?)して全部見たしCDも全部持ってるけど、ちゃんと聞きこんでないものもある。ライト監督、BECKやレッチリのフリーやジェイソン・シュワルツマンが熱く語るのを見てたら、CD全部引っ張り出して、正座して歌詞カード見ながら全アルバム聞き直すべきじゃないかと、なんとなく反省してしまった。

彼らの何より素晴らしいところは、良いと思う音楽を愚直に作り続けている点だ。音楽が変わっていくこともファンが去っていくことも恐れないのが偉大なのだ。Dommuneで開催された関連イベント(面白かった)では、岸野雄一やかとうけんそうといった老舗のファンより、若い「みの」氏(シアトルで生まれ育っらしい)が言った「彼らは比較的新しい世代のユダヤ移民の子という点が大きな特徴なんじゃないか」というポイントが印象的でした。「家族でよく映画に行ったけど、親があまり気にしない人だったので映画の途中から見ることも多く、見逃した部分を想像することで映画作りに興味をもった」とロンが話してたのも印象的で、子どものユニークな部分を自由に伸ばそうとするユダヤ家庭に育ったことは、彼らが誰にも似ない独自の音楽を追求する基礎になったのかもな、と思いました。

いいと思った監督がいれば今誰も見てなくても大昔までたどって作品を追っかけるし、全然違う分野になんども転職したり早期退職したことをまったく後悔してない、”スクールカースト”なんて妄想だと思うけど強いていえば自分は「圏外」だ。…そんな私なので、彼らの生き方に勝手に共鳴してしまうところがあるのかもしれません。

渋谷クラブ・クアトロのライブ(たしか2018年)にはライト監督がカメラ持ってきてるって聞いてたので、私映るかも~なんて思って見ましたが、全然映ってませんでした(後ろの方にいたので)。