映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督「三人の妻への手紙」3367本目

映画「MANK」のヘンリーは兄。こちらは「イヴの総て」の監督・脚本のジョセフが同様に監督と脚本家を担当しています。

「淀川長治映画1000」って本を読んでしまって、面白そうな作品名を片っ端からメモってしまって…(KINENOTEにすでに450本も「見たい」登録してるのに)これもその中の1本です。

この作品は、なかなか裕福そうな3人の妻たちが、これから子どもたちの引率で日帰りクルーズに出かけようというところから始まります。それぞれ夫と今夜の予定など他愛ない話をして出かけますが、クルーズ出航の集合場所に郵便配達人がやってきて、3人に渡した手紙には、参加できなかった共通の友人アディからの衝撃的な手紙。それには「今日これから、あなたがたのご主人の一人と駆け落ちします」と書かれていた……。

ツカミは完璧ですよね。この時代の白黒映画らしく、セリフが多くて話はどんどん進んでいきます。ナレーションがこのアディ自身なのですが、どうも彼女は姿を現さないようです。(「レベッカ」みたい)

回想シーンではこの3組の夫婦がレストランで談笑していて、夫たちはみなアディのことを気が利いたできた女だとほめちぎります。また、彼女の夫はある日失踪したことも語られます。

そんなことを思い出しながら、子どもたちの世話は上の空の3人…。(そりゃそうだ)

3人の妻のうち一人は貧しい家の出身で、別の妻の家の家政婦と幼なじみ。かなりの手練れで、かなり年上の富豪をのせてその気にさせた過去がある。彼はアディが本命だったが、押したり引いたりして自分のほうへ引っ張っていった。

一人は夫が教師、妻のほうがラジオドラマ(メロドラマ)のライターで収入に格差がある。商業主義のプロデューサーのことを夫は不快に思っている。

クルーズから戻って、その夜は夫婦3組のディナー。一人の夫が帰ってこないため、(彼だったのか…)という空気になるが、実は…。

ツカミは最高だったけど、その後は過去エピソードを順番に羅列→割とさらっと結末へと流れて、もう一山足りない感じもしましたね。でも同じテーマで現代バージョンがUSでも日本でも作れそうないいネタです。テレビの長尺ドラマとかでもいいので、やってみてくれたらいいのになぁ。3人の妻に誰をキャスティングするかとか、想像するだけでも楽しそう。

三人の妻への手紙(字幕版)