映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ベルナルド・ベルトリッチ監督「魅せられて」3368本目

これも淀川長治氏ご推薦。ベルトリッチ作品も見てないのがたくさんある。解説を見てこれは「ドリーマーズ」みたいな作品かと思ったら、舞台となっているトスカーナの風景がゆったりとして素敵な雰囲気の中で、マリファナなど回しながら、親世代の人たちと主人公世代の人たちが、なんとなくみんな解放されていく。というゆるやかな作品でした。

リヴ・タイラーがとても清潔で初々しい。ジェレミー・アイアンズは上品で知的なおじさまイメージだけど、この作品では弱さも見せる。もしかしてあの白髪の大柄な男がジャン・マレーか。目力が強くて、それほど弱ってるように見えないけど、この映画の公開の2年後に亡くなってしまった。リヴ・タイラーの周囲に同世代の男性が何人も現れて(親世代もだが)、どいつもこいつも彼女を狙ってるんだけど、彼女は酒やマリファナや雰囲気に流されたりせず、自分を愛し続けてくれる男を見つけて、おまけに自分の本当の父親も見つけて、愛と死と世代交代をトスカーナの美しい山々が包みこむという作品なのでした。