映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルイ・マル監督「ビバ!マリア」3370本目

ブリジット・バルドーとジャンヌ・モローがフレンチカンカンを踊る映画を、「死刑台のエレベーター」のルイ・マル監督が撮ってた?冗談でしょう?(ある意味もっとすごい。セミ・ストリップだもんね)

…と思いながら見てみたら、そういうシェルブールの雨傘みたいな映画ではなかった。心構えを間違えた。強いていえば「まぼろしの市街戦」みたい。ルイ・マル監督は、”茶化しながら(たとえば政府を)批判する”というより、誰も彼も全部を冷やかすようなところがある、と思う。この監督の作品は「五月のミル」を見たのが最初だったんだけど、あのひょうひょうとした世界にちょっと近い気もする。

冒頭、「アイルランド(「北」と付けてほしかった)」でバッキンガム宮殿みたいな兵隊さんたちに爆弾を打ち込んだBBのパパは、その後も世界各地でテロ行為を続ける。娘は同行するうちなんとなく革命思想を持つようになる。パパがやられた後、たまたま通りがかった旅芸人一座の踊り子がひとり傷心自殺をはかって欠員が出たので、やり手のジャンヌ・モローがBBを仲間に引き入れる。(亡くなった踊り子の目を閉じさせるついでに、つけまつげをネコババするジャンヌ・モロー、最高)旅芸人を続けるうち、熱心に通ってくれた革命軍の男たちの戦いに巻き込まれて、つい上手に銃を撃ってしまうBB。そこからはジャンヌ・モローもだんだん革命家の意識が生まれてきて、「マリア&マリア」として革命を成し遂げてしまう二人。最後はヨーロッパに戻って、ラテンアメリカンみたいな服でマリアッチたちと舞台活動にいそしむのだった。

ついあらすじを全部書いてしまうくらい、ストーリーはややこしくて予想がつかない。「まぼろしの市街戦」と言ってしまうとシリアスな部分もありそうに見えるけど、もしかしたらクレイジーキャッツとかドリフターズの昭和の頃のドタバタコメディに近いのかもしれない。(全部好き)

この作品も「淀川長治ベスト1000」に載ってたもの。あの本を見なければ見ることもなかった映画だけど、実に面白かったです。