<ストーリーに触れています>
原作がとても好きなんだけど、こんなお話だったっけ?
冒頭、暗いスタジオの上階からフロアで踊るリナ(芳根京子)を見下ろすエマ(寺島しのぶ)。トランスっぽい音楽の感じもあって、ギャスパー・ノエの「CLIMAX」の冒頭部分の影響があるように感じられる。(あのダンスの場面すごく好きで何十回も見た)とても美しい場面だけど、どう捉えたらいいのか難しい。リナは素敵な女の子だけど、ダンスらしいダンスを踊るわけでもない。「プラスティネーション」(エマの会社で行っている、遺体を美しく保存する技術)とのつながりは、エマが初対面のリナに特殊な感性を発見したってことなのかな。
プラスティネーションは、遺体にメイクアップをほどこす「エンバーミング」を超えて、体を使った立体アート作品なんだな。そう考えると、どう想像して膨らませてもいい気がする。
原作者ケン・リュウがこの映画について語ったインタビューを見つけて読んだところ、「映画は原作と異なっているほうがいい」というポジティブな発言が。さすが幅広く世界を構築する作家。私も素直に、別ものとして見させていただきます。
「テロメア」は不老不死の技術。エマの弟、天音(岡田将生)はリナと恋をして、二人で人類初のテロメア施術を受ける。年を取らない二人、老いていく周囲の人々。
原作は母と娘の物語だけど、こちらは母と息子の物語だったのか…。モチーフというか断片だけしか原作と一致しないけど、本当によくこんなに膨らませたなぁ。予想してたのと全く違う作品だったけど、監督が胸いっぱいでこの作品を作り上げた思いは少し見えてきた気がします。
(この前提があれば、「カムカムエブリバディ」はヒロイン3人要らないなぁ、1人で100年の物語だぁ~!)