映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャッキー・モリス/デヴィッド・モリス監督「ヌレエフ-世界を変えたバレエ界の異端児-」3405本目(KINENOTE未掲載)

エンディングが感動的だ。ヌレエフがおそらく最盛期の頃に公開インタビュー番組に出演したときの、彼の登場で、鳴りやまない拍手に彼が陶然とした表情を浮かべる。その後はエンドロールとともに、この映画で取り上げたバレエ公演の映像ダイジェストを、出典のテロップとともに流す。これだけでも見る価値があります。

私はバレエはおろか、ダンス全般まったく知識も経験もないけど、きわめて洗練された踊りを見るのはどんなジャンルのものでも好きだ。バレエは特に、人間と思えないくらい、重たい肉体を軽々と扱う、現実離れした踊りだ。人の肉体はここまで、「美」の純粋概念に近づける。

ヌレエフには、セルゲイ・ポルーニンを知ったときに「ヌレエフの再来」と言われていたことで興味を持って、この映画でやっと実像が見えた。

すごく、肉体や精神に負担をかける踊りだと思う。でもこんな踊りができるなら、生活全部棒に振ってもいいような、そんな人生を送ってみたいような気もする。

ヌレエフと一緒に踊っていたマーゴ・フォンテインも素晴らしいですね。オードリー・ヘップバーンみたいな本物の貴婦人だ。映像が残っていたことに感謝します。