映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

福永壮志 監督「アイヌモシリ」3413本目

テレビで放送したのを録画したら、映画の前に監督のインタビューも入ってました。彼自身が勉強したくて、それにアイヌが演じるアイヌの映画を作ってみたくて、この映画を作ったとのこと。子熊を大事に育てた後でいけにえとして神に捧げる、昔からの「イオマンテ」というアイヌの儀式を復活させるかどうか、大人たちも迷い、アイヌ文化にまだ染まりきっていないアイヌの少年も戸惑うという内容なので、興味を持っている人たちになるべく実情に近い形で様式化した状況を伝える意義が大きいように思います。その儀式をやるべきかどうか、という議論は必要かもしれないけど、まずその前に「それって何?」を知らなければ話が始まらない。

北海道にツアーで行ったとき、ホテルで夕食のあとに周囲を歩いていたら、そこが、この映画の舞台になっているアイヌコタンだった。知床の流氷を見に行くのがメインのツアーで、阿寒湖はたまたま泊っただけ。アイヌコタンのことはパンフレットにも一言も書かれてなかった。近所の道を歩いていたらいつのまにか魔法の町に紛れ込んだみたいで、すごくドキドキしたなぁ・・・。

「ムックリ」って楽器というか音を出す道具は、世界中のあちこちで使われてきたものと似てる。メロディやリズムのある音楽とは違うけど、お経や吟唱にも似た「倍音」が、いまではテクノやトランスとかが好きな人たちにも関心を持たれているらしい。この映画にけっこう人が入ったのはマンガ「ゴールデンカムイ」の影響なんだってね。入口は何でもいいと思います。

(イオマンテの場面で「ミッドサマー」とか思い出さない方がいいんだろう、思い出したくないな、なんだこの葛藤。せっかく勇壮な姿やムックリの不思議なしらべに酔ってたのに?)