映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ソン・ヘソン 監督「力道山」3419本目

韓国で作られた、朝鮮半島出身の日本のスーパースター力道山のドキュメンタリー映画(ロケは日本でやってるけど)。これを日本に移して考えると、アメリカの大リーグでかつて活躍した日本人(または日系人)選手のドキュメンタリーのようなものかな。韓国の映画界がこういう題材をどう料理するのか?という観点からも興味深いです。

諦めの混じった激しい哀しみが、韓国映画の特徴・・・だと思ってます。力道山は強くてカッコよくて、子どもは全員(といっていいほど)ファンだったと聞いてます。立派な体格で自信満々な表情の写真を見るとカッコいいけど、苦労人お一部にありがちな慢心も感じられる・・・。黒いうわさがあったのは、何も力道山だけではなくて相撲の世界にもプロレスの世界にも裏世界とのつながりはよく言われてきたことで、往年の石原裕次郎みたいに黒光りした(本物の)力道山の顔を見てると、そんなことも思い出す。清廉潔白な偉人、ではなく、たくさん欠点もあったけど大好きな俺たちの兄貴、みたいな描き方をしてることに私は好感をもちました。

力道山を演じたのはソル・ギョング。号泣した「ペパーミントキャンディ」の主役だ。韓国生まれ韓国育ちですよね?それにしては、アクセントが少し違うだけでかなり流ちょうな日本語のセリフを言えてて、すごいなぁ。実際は日本育ちといっていいくらい長年日本で過ごしてるので、日本人と言葉では区別がつかなかっただろう。映画製作者としては、韓国の観衆の思い入れのある俳優にヒーローを演じさせたかったんだと思うけど、そう考えると、在日出身の韓国のスターっていないのかな。いないんだろうな。

「パチンコ」という小説を読んだとき、半島から日本に来た人々の辛苦を知って辛い気持ちになった。彼らのことを半島側から描くものがもっとあってもいい。もっと読んでみたいし映像として見てみたいなと思います。

力道山(字幕版)

力道山(字幕版)

  • ソル・ギョング
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