映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アニエス・ヴァルダ監督「アニエス・Vによるジェーン・b」3421本目

ひとりアニエス・ヴァルダ特集。(「ベルサイユのばら」にもスタッフとして参加してる)

これは「アニエスによるヴァルダ」などから予想して、ジェーン・バーキンのバッグがいかに取っ散らかっているかを見たエルメスが彼女の名を冠したバッグを作るまでのドキュメンタリー・・・のわけないだろ、と思ったら大きくは違ってなかった。

「カメラを見るのは苦手。鏡を介して見つめ合うのは・・?」という会話に続いて、鏡を介してジェーンとアニエスが見つめ合う映像、という展開って、「パタリロ」とか「マカロニほうれん荘」以来の日本の漫画っぽいなぁ(古いですね、すみません)。なんだか女性同士で気が置けない雰囲気で、ただのおしゃべりのようで、見ているほうもリラックスしてきます。ヴァルダ監督の映画にはいつも、こういうフレンドリーな温かさがあって好きだな。

私の世代だとラース・フォン・トリアー作品の強烈なシャーロット・ゲンズブールのほうが印象が強くて、母の方は旧版「ナイル殺人事件」のメイド役とか、地味な役のイメージがある。(「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」をリアルタイムで見るには幼すぎた)話してる雰囲気は率直で裏表がなくて・・・感性のままに生きる人だ。このときゲンズブールとは別れて次の彼氏を紹介してるけど、まだ彼は生きてた。映画がしんみりしないのは、だからか。

海辺の場面では、多分ニキ・ド・サンファルと思われる立体作品がたくさん並んでる。この人の作品、久しぶりに見たわ。(ニキ美術館に昔行ったけど、ずっと閉館してて作品は非公開みたいだ。また見たいな、元気出るから)なんかこういう、女性の本音をお互いにさらけ出してもいい場を作るのがヴァルダ監督はうまい。

これも、夫のために作った「ジャック・ドゥミの少年期」みたいに、大好きな人にプレゼントするアルバムを写真だけじゃなくて、花やリボンやその人の好きなものをたくさん使って素敵に飾り付けたものみたいだった。アニエス・ヴァルダの愛情には、いつも参るな・・・。

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