映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アニエス・ヴァルダ監督「アニエスの浜辺」3422本目

監督がやっと自分のことを語り始めた。完結編「アニエスによるヴァルダ」に至る前の、自分の生い立ちを振り返る作品だ。これもまた彼女の愛するものたちを散りばめた、宝物のアルバムみたいな、優しくてかわいくて美しい作品。

いつものように、映画のあちこちに過去の作品からの断片が取り込まれている。見覚えがあるけど、どの作品だったか思い出せない。これより後の作品で見た過去作品の一部かもしれない。時系列の乱れ、というより、宇宙の歴史の中で人間の100年足らずの歴史を時系列に並べることの無意味さ、か。

夫が死に至る病を得て亡くなるまでの間にドキュメンタリーを撮ったことをゆっくり語るのは、この映画だったんだな。彼自身が公にしたがらなかったから、皆で黙っていたと。「少年期」の公開すぐに亡くなった彼は、多分世界でいちばんふかふかの愛情に包まれて逝ったんじゃないだろうか。

映画ビジュアルにも、彼女の他の映画でも使われてる、彼女の会社のすぐ前の道路に砂を敷いて作った”浜辺オフィス”。この映画の全体がここで撮影されたのかと予想してたけど、後半のごく一部にしか出てこなかったし、説明もほとんどなかった。それよりずっと、本物の浜辺のほうが多かったな。

美しさと愛情でいっぱいなので、彼女の作品を見ていると、ハグされているような幸福感があります。

まだ見る方法が見つからない「冬の旅」はAmazon.comとAmazon.co.ukでDVDを安く見つけたので買おうかな・・・フランス語の映画を英語字幕で見るのちょっとキツイけど、弱ってるときに幸福感に浸れる作品なので手元に置いておきたいな。TSUTAYAから届いた16枚(またそんなに借りたんかい!)を見終わったら考えよう。。。

アニエスの浜辺 [DVD]

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  • アニエス・ヴァルダ
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