映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

石井輝男 監督「ゲンセンカン主人」3424本目

つげ義春の妻、藤原マキが書いた絵日記みたいなエッセイ本を読んだとき、見たいなと思った映画。1993年。30年近く前の作品です。バブルな時代だから、この映画の”何もない感じ”が嘘くさく感じられたかもしれないけど、今見ると”昭和の頃に作られた映画”のようなおもむきを感じるな。もう平成だったのに。

「李さん」を演じた横山あきお、懐かしい。久しぶりに見た。彼もその家族(妻と二人の子)も、何もしていない。主人公の佐野史郎の家のキュウリを盗んだり五右衛門ぶろを沸かしたりする以外、日がな一日何もしないでいる。

「紅い花」は美しい話だけど、映画だと語り過ぎちゃうので、おそろしく突き詰めたつげ義春のマンガを見てるほうが世界が広がるなぁ。

「ゲンセンカン」は面白い。実写映像にすることで勢いが出る。おどろおどろしくなりすぎず、いい作品になったと思う。

「××百店会」って小冊子、何度か都内でももらったことがあるので、池袋百店会もありそうな話だ。川崎麻世のインテリ気取り、岡田奈々はまだこのときも本当に可憐で、これもよかった。

いまVODで提供されてない作品のなかでは、十分楽しめる(過度に時代がかっていないし、暗すぎずマニアックすぎない)映画だったと思いますよ。