映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウィリアム・ディターレ 監督「ゾラの生涯」3436本目

ポランスキーの「オフィサー・アンド・スパイ」を見たので、これも見てみます。あっちは2022年の公開されたばかりの新作だけど、これは1937年の作品。ワーナーブラザーズが作ったアメリカ映画です。

1894年のドレフュス事件を知らなかった(に限らず世界の歴史すべてにうとい)ので、彼を熱く擁護したゾラを知って、彼の側からこの事件を見てみたいと思います。

ディターレ監督って知らないなぁと思ってよく見たら、ディートリッヒ様の「キスメット」の監督でした。

内容は、「ライター・アンド・スパイ」と呼びたくなるくらいドレフュス事件のドレフュスに関わる部分に割く時間が長いし、ポランスキー版はリメイクかなと思うくらい、その部分に関しては映像に既視感があります。広場に集まった大衆の前で任を解かれ、上官が彼の軍服の徽章をちぎり取る場面とか。そこでゾラは大衆に紛れて柵の外から覗き込んでるだけ。・・・それくらい、この事件に関わったことがゾラの生涯において重大なことだったってことですね。

それでも主役はゾラ。彼はドレフュスを救って自分は判決を聞かずに亡くなり、ドレフュスは軍に戻って長生きします。ゾラはこの事件に関わったことで殺害されたという見方もあるようで、この文豪にとっては人生を左右した大事件です。一方、この後に起こった第二次大戦でホロコーストを生き延びたポランスキーから見れば、事件の主役はゾラではなくてドレフュスでなければならないのかもしれません。

映画って、弱気を助ける正義の人が主役になりがちだけど、正義の人が登場する前に踏みつけになった人は忘れられてしまう。死んでもエンドロールに俳優の名前も出てこなかったりする。

見終わって改めて、「オフィサー&スパイ」のほうが、「ゾラの生涯」のアナザーストーリーだったんだな・・・と思うのでした。

ゾラの生涯(字幕版)