映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アイラ・サックス 監督「ポルトガル、夏の終わり」3442本目

<ネタバレあります>

日本では、人の名前の映画タイトルが、風景とか状況を表現したタイトルになることがちょくちょくある。もともと邦画は「丹下左膳」みたいな既知の英雄や「横道世之介」みたいに特異な名前でもなければ、タイトルに人名が使われることが少ない気もする。(ただの雑感でした)

この映画の主役フランキーはイザベル・ユペール先輩が演じている、というより、彼女のために当て書きされた映画。フランス人の一家がポルトガルに移住していて、フランキーの娘はヒスパニック系に見えるなと思ったら義理の娘で、ヘアメイクアーティストのアイリーンはNYの人なので彼女が表れるとみんな英語になる。こういう状況が、日本で日本語でおおむね日本人ばかりと暮らしてる自分には瞬間的には理解できず、ちょっと混乱しながら始まる。

アイリーンの彼氏のことをフランキーはとても嫌ってるけど、人当たり良いし、ほかの映画ではイケてるビジネスマンという設定で出てもおかしくない。フランキーの今の夫はサンタクロースみたいに大きくて優しげで、この映画は愛、思いやり、率直な人間関係、といった世界なんだとわかる。

彼を親友アイリーンとくっつけようとしたけど玉砕、むしろアイリーンはフランキーの夫ジミーといい雰囲気だ。残り少ない時間を、その先のことを考えて仕切り倒そうとしたけど思い通りにはならない。だけど丘の上に愛する人たちと一緒に過ごす瞬間(ほんとに短時間)は、何よりも美しくて、彼女は多分この風景を思いながら天国へ行くのかもしれない。なんとなく少し切ない気持ちになるけど、大きな気持ちのうねりは起こらない映画でしたね。