映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

今敏監督「パプリカ」3443本目

原作を読んだので映画のほうも見直してみました。すごいね、両方とも。とんでもないです。原作者も映画監督も、イカれてて言語道断で、神だ。

夢に入り込んで治療するというコンセプトは、たぶんこの原作が最初ではないだろうけど、2003年「エターナル・サンシャイン」や2010年「インセプション」より前だし、「インセプション」とよく似た小説「折りたたみ北京」はそれより後の2014年か。

筒井康隆の小説って、同時代のどんな小説家よりおかしいって思ってたけど、これを見ると今敏のほうがおかしい。(ものすごくほめてるつもり)

小説は登場人物が多いので、映画ではパプリカのクライアントである会社重役の能勢がはしょられて、冒頭から粉川警視監が登場する。というか、いきなり彼の夢の中のサーカスの場面からだ。この思い切った構成!観客が付いてくることより、映画としての荒唐無稽な楽しさ重視。彼らが入り込むホテルのエレベーターや廊下も、「シャイニング」みたいで良い。

夢に入る機械は最初から開発中の新型「DCミニ」だけで、原作でパプリカが使っていた実用レベルの旧型は存在しない。

巨大化するイヌイ氏は進撃の巨人のようだ。(このアニメが作られた2006年より後、2009年に連載開始してるけど)初めてこの映画を見たときは、こいつのことを「魔神」とか書いてた。ストーリー理解してない(笑)しかもこの場面、パプリカが狂乱の子供部屋世界全体をズルズルと飲み込んで膨らんで割れて、そのままエンディング、という、かなり誤った記憶をしていました。(そのように膨らんで割れるのはもっと最初のほう、パプリカじゃなくて島じいさんだ。

音楽がまた良い。素晴らしいです。平沢進の特徴は単純なリズム(ポリリズムとかじゃなくて)、長調でメロディの最後の音の収まりがいいこと。ドで始まってドで終わる、とか。

何度見ても見飽きない。細部まで楽しめる。惜しい人を早くに亡くした、と悲しむより、この作品に出会えた喜びが大きいなぁ。新作は出ないけど、これを何度でも何度でも見ればいいのだ。

パプリカ

パプリカ

  • 林原 めぐみ
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