映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ケリー・ライカート 監督「オールド・ジョイ」3450本目

ミシェル・ウィリアムズがこの作品を見て「ウェンディ&ルーシー」の出演を監督に申し出た、と聞いて見てみました。

昔からの友達に急に誘われて、二人で山奥の秘湯へドライブに出かける。誘われた方は、それほど乗り気じゃないように見えたけど、行ってみたらソイツの方が癒された。・・・って話だった。(まとめすぎか)

最初は、1.知ってる俳優がいない、2.人気のない山道をドライブ、というところから、最近よく見てた”トラウマ系B級ホラー”の匂いを勝手に感じ取って、みょうに緊張して見てたのですが、だんだん、私自身ときどきやってる「友達から急に誘われてキャンプ」だなと気づいて、自分もマークの車に同乗してるような気分になっていきました。彼らが入る、何の変哲もないドライブインが、私たちが立ち寄るような街道沿いの蕎麦屋に見えてくる。

マークが連れてきた犬の名前はルーシー。(本当の名前らしい。)犬以外はこの後の「ウェンディ&ルーシー」との脈絡はありません。

最初、するする見てたらそのままオチなく終わってしまったので、何か見落としたかなと思って二度見。そしたら、何も見落としてなかったんだけど、彼らのかわす何気ない会話の映画だったんだな。10代の頃の遊び仲間の一方はずっとヒッピー、もう片方はカタギになって地域のために働いてる。行く道がどんどん分かれていったけど、久しぶりに会えてよかった。このあと二人はまた何年も、ひょっとすると何十年も会うことなく、もしかしたら「あいつ死んだらしいよ」という便りがどこからか来るだけかもしれない。世界中の8割くらいの人が共感できるテーマだ。たいがいの人が仕事や生活に追われてるから、この映画をヒッピーのカートの側から語る人は多分少ない。実際彼は何をしてる人って設定なんだろう。でも私はカートのほうになりたいんだよな・・・。