映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フリッツ・ラング監督「無頼の谷」3463本目

今週はいつものU-NEXTをオフにして、Amazonプライムのウォッチリストに溜まった作品を片っ端から見てみます。これはディートリッヒ様がなんとフリッツ・ラングが監督した西部劇だそうです。三つ巴。ディートリッヒ&ラングというドイツ勢がアリゾナの砂漠で出会った?・・・思い返してみると、ラングはほかにも何本も西部劇を撮っている。(「西部魂」とか見たわ)彼がハリウッドに行って西部劇を撮るなかで、重要な役どころを演じられる女優として、よく知っているディートリッヒをキャスティングした、というところかな?

制作は1952年でカラー作品だけど、色あせたような赤茶っぽい色彩です。しばらくはアーサー・ケネディや地元の(設定だけど)悪い奴らが強盗したりしていて、普通~の西部劇です。ときどき歌が挿入されて(その時間はセリフや現場音なし)、歌詞でストーリーを語らせています。

床屋である言葉を口にした男に、突然となりで髭剃りをしてもらっていた男が襲いかかる場面、素晴らしくスリリングですね。拳銃を持っていたけど取り落とし、そこにあった剃刀を手にして、取っ組み合って手をついた棚の上のものを壊し、最後は外へ放り出される拍子に窓を破壊してしまう。このあたりの細かい演出の出来の良さがやっぱりフリッツ・ラング。

ディートリッヒの女友達ドリー役の女優、クレジットがないけど誰だろう。ハスキーな声で歌うように彼女について語りながらゆるやかにピアノを弾く。大人でちょっと荒れてて・・。

ディートリッヒは西部劇ではいつもだけど、全男性のアイドル、女性の敵(笑)。よく考えてみたらこのとき彼女51歳です。すごい!せいぜい30歳くらいの役どころですよ。彼女の恋人フレンチ-(「砂塵」では彼女自身がフレンチ-って名前だったので、ちょっと混乱)を演じたメル・ファーラーは当時33歳くらい。ちょっと軽くて愛嬌があって、すごく女にもてそうな男です。

その後のストーリーは、男二人とディートリッヒという三角形ができたり、それ以外の男たちは荒くれ者で結局味方じゃなかったり、という、ありがちな成り行き。この映画の見どころはやっぱり床屋の場面だな。

目を見開いて、わずかに口角を上げて、少し上目遣いで人を見るときのディートリッヒ様が誰かに似てると思ったら・・・ヤマザキマリだった。意外すぎる・・・