映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャン・ルノワール監督「河」3469本目

サムネイルがインド女性なので、サタジット・レイ監督のノンフィクション的なドラマだと思っていたら、ジャン・ルノワール監督!普通のイギリス少女ヴァレリー、美少女ハリエット、インドとの混血の少女メラニーの3人のインドでの生活をつづる映画です。

ヴァレリーの雰囲気がローラに似てるからか、彼女の視点からのナレーションで開拓者の日常を語るからか、まったく舞台が違うのに「大草原の小さな家」を思い出します。つまり、海外領土でのイギリス人の生活をつづったものではあるけど、あくまでも普通の少女の物語。主役のヴァレリーを演じたエイドリアン・コリだけはその後俳優を続けたのね。この映画でも演技に魂が入ってる感じがします。(・・・えっ「時計じかけ」でひどいめにあう作家の妻がこの人!)

それにしてもインドでの彼らは自由だ。若い男と子羊のような少女たちが好きなように振舞ったり、危険なコブラをもてあそぶ坊やが放置されていたり。昔はイギリス家庭もおおらかだったのか、インドの暑さがそうさせるのか。

若いイギリス人、ジョン大尉へみんなが持ったほのかな恋心は、3人の少女たちと大尉の楽しい時間を最後には壊してしまう。見ていて胸がキュッと痛みますね・・・。これは「幼少期の終わり」を描いた普遍的な作品だったのね。

ジャン・ルノワール監督の作品では叙情的な「ピクニック」がある一方で、大人の複雑な世界を描いた「ゲームの規則」「大いなる幻影」もある。でも「大いなる幻影」でも私は「登場人物がみんないい人」という感想を書いている。(9年前に見たので詳しく覚えてない)他にもたくさん作品があるけど、これを見た後は同じ原作者の「黒水仙」を見たくなるな・・・。

河(字幕版)

河(字幕版)

  • パトリシア・ウォルターズ
Amazon