映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フリッツ・ラング監督「真人間」3473本目

強烈にアクの強いタイトルだけど、原題は「You and Me」と強烈にシンプル(笑)。でもストーリーを知ると、「お互い様」という意味に見えてきて、含蓄のある原題でもあります。これも主役はか弱げなシルヴィア・シドニー。(この人88歳まで生きてティム・バートンの映画にも出たんだそうな。ティム・バートン、好きそう)

シルヴィア・シドニーって、アマンダ・セイフライドにちょっと似てるかな。大家の夫婦に実の娘みたいに可愛がられる、天真爛漫な女性。

二人の「新婚旅行」が、各国料理食べ歩きってのが、なんとも可愛い。ヘレン(シルヴィア・シドニー)がイタリア料理店でスパゲティの食べ方を知らず、細かく麺を切って食べて注意されるのも可愛い。アメリカ人にもそんな時代があったんだなぁ。。。

<以下ネタバレあります>

天使のようなヘレンも”前科者”だというのがピンとこなくて、気づくのに時間がかかってしまった。彼女の罪状は何だったんだろう?(言ってたかもしれないけど)そのことを知った彼は彼女を赦さない(彼女は彼を受け入れてるのに)というのが、自分から告白しなかったという事情があるにしろ、なんとも時代がかかっていますね・・・。

そして大団円に向けて、清純きわまりないヘレンが、悪党の親玉がどれほどピンハネするか、クマちゃんとアヒルちゃんで飾った黒板で、幼稚園の先生みたいに計算してみせるくだり。天使だったシルヴィア・シドニーが賢い幼稚園の先生かマフィアの親玉?に見えてきます。まるで白雪姫と大勢の小人ギャングたちです。彼女の演技力も大したものだけど、こういうヒネリが・・・。そういえば冒頭にのんきな歌もしばらく流れてた。Eテレ幼児番組かよ!

「映画監督に著作権はない」でラングはこの映画でコミカルに教育を行うことを意図したと言ってます。(マジEテレだった)シェイクスピアの悲劇にも必ず喜劇的側面があり、自分もそれを目指した、と。意外だなぁ。

この作品、あまりにもあまりにハッピーエンドすぎて脱力したけど、ヘレン先生の「わるいことはやめよう」教室にウケたので、やっぱり好きです。

真人間(字幕版)

真人間(字幕版)

  • シルヴィア・シドニー
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