映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリント・イーストウッド監督「ルーキー」3483本目

<結末近くの内容にふれています>

クリント・イーストウッドの監督作品は片っ端から全部見る価値があると思うけど、これはそれに加えて、私の大好きなラウル・ジュリア(いつ見てもギョロ目)が出演していて、しかも明日でU-NEXTでの提供が終わるというので、急いで見てみます。

ラウル・ジュリアとトニー・レオンは、私から見て、世界二大「”愛してる”が本気に聞こえる男」なんですよ。ラウル・ジュリアの方は、敵に回せば「愛してる」って言いながら撃ってくる場面も想像できるけど、恋人や夫でなく、父親でも弟でもいいから身内にいてほしい、愛情深い男性です。(というイメージ)

で、この映画。ストーリーだけ見ると、どこか既視感があってあまり面白そうじゃないんだけど、やっぱり見せますね、イーストウッド監督。お坊ちゃんっぽいルーキー(マーティン・シーン)がスーツを脱いで本性を現していくのが痛快。囚われたままのニック(イーストウッド)を救うために、デタラメに敵の手の者を襲う。火をつける。妻を助けるためにがむしゃらに走る。そして、彼のトラウマの斜め上を行く、爆発寸前のビルから車で飛び出す場面。無事着地したとも言えないけど、無傷で逃れられたのを見て、トラウマから解放されて観客はスカッとする。

そこからどういうわけか(観客が納得しながら見られるように、ちゃんと練られてる)ニックの身代金を預かった奴を、逃げ出したニックとルーキーが追う。それを警察が追いながら戸惑うのが愉快。

金を受け渡す男が当然撃たれて、ニックとルーキーが見つかって銃撃戦。トランクが壊れて金が散乱、ニックとルーキーは飛行機にひかれそうになり、最後は飛行機どうしが(地上で)ぶつかって炎上。こんなの初めて見た!

追いつめられたストロム(ラウル・ジュリア)とニックが荷物室から「預入荷物受け取り」のベルトコンベアへ走り上ってくるのもいい絵だ。

昇進してしまったニックが急に貫禄を見せるのも可笑しいし、ルーキーが新パートナーを追い出す「既視感芸」、よしもとのギャグのようです。

イーストウッド監督はほんと、こういう小ネタで観客を喜ばせるのがうまい。最後に大きなデスクで葉巻をくわえて笑う笑顔が誰かに似てると思ったら・・・所ジョージ・・・似てる?