映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

大九明子監督「私をくいとめて」3486本目

<ネタバレあります>

この映画も痛い・・・痛くて痛くて。第三者的に言うわけじゃなくて、31歳のときの、シャイだとか言っても、もう可愛いと思ってもらえなくなった年齢の自分を思い出して、いたたまれない気持ちで爆発しそうになります。

こっぱずかしい思いで自分をズタズタに傷つけながら、人は大人になっていくのだ。(ならないままだった気もする)

松岡茉優以上に綿矢りさの「私」を演じられる人がいるんだろうか?と思ってたけど、のん、素晴らしいですね。見事にわだかまってくれました。年下の営業マン林遣都もはまり役。「A」の声は中村倫也で姿は前野朋哉なのか・・・この二人がまた良すぎる。

こういう思いって、こじらせすぎずに、なんとかなだめて次に進めれば、同様の小僧、小娘たちに温かい大人になれるけど、完全に失敗してしまうと、一生世を拗ねてだんだん暗い狭い道を行ってしまうこともある。綿矢りさの作品をなるだけたくさんの人が見て、わだかまりの先輩たちの愛に気づいてくれたら、それだけで世界が少し明るくなる気がするよ・・・。そういう意味で「花束みたいな恋をした」よりこっちの方が好きだな。