映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウィリアム・フリードキン監督「恐怖の報酬」3488本目

途中まで違う映画を見ているのかと思った。アンリ・ジョルジュ・クルーソー監督のを見たときの印象が、ドライバーの募集から始まってすぐにトラックが走り出したような印象だったから。

この映画では、4人のドライバーたちが命がけで大金ゲットを狙う背景を丁寧に説明してから始まるんですね。それぞれの、割とろくでもない事情。彼らが逃げのびてきたのは、世間に顔向けできない男たちの吹き溜まりのような町。爆発事故が起こった油田の責任者がこの4人を雇うまでで、映画はちょうど半分。クルーソー監督版は、緊張して胃が痛くなりながら最後まで一緒に疾走するように見たのに、こうなると走り出すのが待ち遠しい。

ロイ・シャイダー、「オール・ザット・ジャズ」と言われてだんだん思い出した。確かに彼だ。どちらの作品でもうまいなぁ。

登場人物の描き方が、なんとなく劇画調。ざく!ブシャ!どっかーん!と、効果音がいまどき考えられないくらい大きい。音楽は、一部キース・ジャレット(!)がクレジットされてたりするけど、ヴァンゲリスかなと思う感じの、黎明期のシンセサイザー音・・・と思ったらタンジェリン・ドリームなのか!(汗まみれの場末の男たちからイメージ遠いなぁ)

しかし不正をしてるパリの銀行家がトラック運転できて、しかも、落ちかかった吊り橋を豪雨のなか運転しきるなんて、あんまりじゃないか。いろいろと、仕掛けがB級ホラーみたいで気持ちが入らないなぁ。

クルーゾー版は、いきなり走り出してどんどこ進むところが私にも衝撃だったけど、こっちはよくできたお化け屋敷みたいに仕掛けができすぎてて、いまひとつ乗り切れなかった気がします。でもロイ・シャイダーもほかの3人のドライバーもとっても良かったな。