映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督「ハートストーン」3508本目

先日見た「ニトラム」を思い出しながら見ます。アイスランドもタスマニア島も、欧米社会のなかでは辺境中の辺境。人種差別や女性差別といった、世界の他の地域でテーマになりがちなものではなく、ムラ社会のなかで孤立していく同じ属性の人々の中の「違い」がもたらす軋轢が、この2つの作品では取り上げられています。

「ここは退屈迎えに来て」とか「リバーズ・エッジ」とか「海炭市叙景」とか・・・邦画に限らず韓国映画にもアメリカ映画にも、ムラ社会から逃げ出したいのに出ていけない人たちの闇を描いた作品があって、そういう作品と共通する暗さがこの作品にもある。

アイスランドでは今も、男の子の苗字はすべて父親のファーストネームに「ソン」をつけたもので、女の子の苗字は同様に「ドッティル」をつけたもの。他の北欧諸国では廃れた、姓だけで性別がわかる慣習が残る小さな国の辺境の村で、クリスチャンというファーストネームの男の子が、どんな風に思い詰めていくか。。。(アイスランドでは2010年から同性パートナーシップを認めたりしてるらしいけど、どうなんだろね)

感想を読むと、「醜いカサゴ」が象徴するものについて考察している方が多いですね。きっとその通りなんだろうな。しかし・・・「さかなのこ」の後にこれを見ると、「旨いのに!唐揚げにして!食べてみて!」という気持ちしか起こらない・・・。(カサゴの上品な美味に気づいて珍重するようになるというアナザーストーリーを作った場合、同性愛者の意味はこれによってどう象徴されるんだろう)すいません最後こんな話で締めちゃって。

ハートストーン(字幕版)

ハートストーン(字幕版)

  • バルドル・エイナルソン
Amazon