映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アラン・パーカー監督「アンジェラの灰」3516本目

タイトルとビジュアルだけ見て、アンジェラという人が戦禍で灰になって残された小さい子供がカメラを睨んでる辛い映画かと思ったら、死んだのはアンジェラの子どもたちだった。

アラン・パーカーって「小さな恋のメロディ」~「フェーム」~「ザ・コミットメンツ」の監督か!ロバート・カーライルとエミリー・ワトソンも出てる。しかし原作があって、実際にニューヨークへ渡って作家になったフランクの自伝小説だった。かなり過酷な、胸が痛くなるような生い立ちだけど、彼は相当な楽天家で、実にしぶとく(汚くはない)お金を貯めてアメリカを目指します。

ロバート・カーライル、1995年から「マクベス巡査」、1996年「トレインスポッティング」のベグビー、これはその数年後の1999年。彼は生真面目な青年も自堕落な青年も同じくらいリアルに演じるんだ。この映画ではその両方が共存していてやっぱり生きてる。エミリー・ワトソンは夫に従属して自分からは何もできない女だけど、置かれた場所で最大限にしぶとく生きていく。

「ベルファスト」を先に見た人はみんなあの映画を思い出すだろうな。ノスタルジックでケネス・ブラナー的に美しい町。アイルランド島の、北アイルランドとそれ以外の地域、たとえばこのリムリックがいかに違うか(父はベルファスト出身ということで差別されて仕事に就けないと示唆されてたような)、全然知らなかったな。美化されていないアイルランドで、ちゃんと真っすぐな心を持って育ち、たくましく生き抜いた青年。何よりまず、彼みたいに強くありたいなと思います。

なんか・・・大人になっていろんな国に行ったり、いろんな仕事や境遇の人たちと話をするようになったり、世界中のさまざまな映画を見たりしても、人間って同じだなって思う。家族や愛する人に執着することや(いい意味でも悪い意味でも)、外のものを差別したりいじめたりすることも。今いるところが嫌だから引っ越しても外国に行っても、何も変わらないのかもな。しぶとく生きるためには、今いるところで生き抜く力が必要なのだ。どこかのタイミングで大陸へ渡るにしても。

うん、「ベルファスト」よりずっとこの映画、好きです。

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