映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マッテオ・ガローネ 監督「ほんとうのピノッキオ」3527本目

50年前ならロベルト・ベリーニがピノキオを演じたらぴったりだったけど、この映画ではゼペット爺さんの方です!これもまたぴったりだなぁ。

DVDで見たら、収録されてる他の映画の予告編がホラーばっかりだったんだけど、この映画自体はおなじみのピノキオのストーリーのままです。ピノキオの顏の年輪がぱっと見、シワに見えてしまって、ときどき「はっ」としてしまうけど、それくらい。

それより、数十年ぶりにしっかりこのストーリーを見ていると、子どもの教育観というか倫理観が昔とずいぶん変わったものだな、と思う。・・・昔はとにかく「サーカスに行ってしまうピノキオは悪い子だ、だから鼻が伸びるしロバになるしクジラに食べられる。自業自得だ」と教わった・・・でも今見ると、まだ判断力のない学校に上がる前の子どもを誘惑したりだましたりする悪い大人たちは青少年保護条例違反だし、18歳になる前の子どもがした約束は消費者保護法で全部取り消しだ。ピノキオは全然悪くない、悪いのは全部大人だ。

少なくとも、日本の一般的な常識はそんなふうだ。だからこの映画のなかのピノキオは、知恵のない無垢で哀れな子どもで、大変な苦難ののちにゼペット爺さんの深くて広い愛に出会い、良い人間として立派に目覚めた優良児なのだ。

私も、何か失敗したり悪い人にだまされたりするのは、自分が愚かで不注意だからだ、という感覚が強いけど、世の中は変わったのかな・・・。