映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ケネス・ブラナー監督「魔笛」3536本目

この映画の世界に入っていくのにすごく苦労してしまった。最初はオペラだからイタリア語かしら、などと思いながら見たし、解説を読んでから見直しても、歌のメロディに耳ばかり捕られてセリフ(字幕)が入ってこない。

たまたま女神たちに見出された普通の青年が、魔王に拉致監禁された姫を従者とともに救い出して姫と結婚するのだ・・・というストーリーは、あらゆるすべてのロールプレイングゲームに共通する、耳慣れたストーリーだなと思ったけど、そうなるとやっぱり、戦争の最前線で生き残った男たちが中世ふうの女神たちや姫のいる異世界へ飛ぶのが、ちょっと唐突で自然な気持ちで移行できないです。

「ファンタジア」、あのディズニーの名作と言われる作品が、私はまったくピンとこなかったんだけど、それに近い。音楽をどう聴いて頭の中で何を想像するかは、それぞれの自由だけど、断片的なイメージをそのまま見せるより、観客を大いに意識したエンタメ性を持たせてほしいなぁと思う。(ファンタジアで足りない私は貪欲すぎるんだろうか)

ケネス・ブラナーってシェイクスピア演劇出身だから、古典をいかに現代の人たちに「自分たちの物語だ」と思ってもらうか、長年苦心惨憺なのかもしれない。私はわりと、古いものは古いまま見て、最初違和感があってもだんだん入り込んでしまうマジックをじっくり味わいたいほうなので、ここまでサービスしてくれるとお腹いっぱいになってしまう。

でもいいのだ。私はモーツァルトが映画「アマデウス」で、死の床で書き続けていたのがどんな音楽か知りたかったし、ソプラノの人が「ア~アッハッハッハッハッハッハ~~~」って歌う不可思議な曲がどういう場面なのかも知りたかったのだ。初心者の私はむしろ正統から離れて混乱してる気もするけど、クラシック音楽の高~い敷居をちょこっとだけまたいだような気もします。