映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルキノ・ヴィスコンティ監督「異邦人」3554本目

中二くらいのときにカミュを読んだはず。もっと影の薄いフランス人をイメージして読んでた気がする。マルチェロ・マストロヤンニはイタリアのイケメンで育ちが良く、地位も金も女もなんでも手にしている豊かな男(をいつも演じる)と、私は認識している。むしろ、昔の日本の映画に出てくる、地方から出てきて殺人を犯すような、スネたやせっぽちの不良少年の方がこの主役に近いように思える。

「異邦人」というより、平成の日本なら「新人類」、昭和の日本なら「xx族」と呼んだ、年よりには理解できない、情緒の感じられない若者?あるいは、カミュの意図するところは「どの場所やグループにも所属しない人」?

彼が”アラビア人”を撃った原因は、漠然とした恐怖や不安か。白人警官が黒人少年をそういう気持ちで撃ってはいけないし、一般人の集団がそんなことで人を血祭にあげてはいけない。でも人はそうすることがある。だから、そうしないように、自分をコントロールし続けなければならないのだ。

この映画の中のマルチェロ・マストロヤンニには、貴族の甘えみたいなものを勝手に見て取ってしまうな。「甘い生活」の人だから。(前に見た映画の擦り込み、よくないなぁ)ヴィスコンティ監督は、自分のような男が、何の気なしに生活をしていて、この男のような状況に陥ったとしたら?と想像したのかもしれない。それもアリなんだろうけど、ずいぶん私のイメージと違う映画だったなぁと思うのでした。

異邦人 デジタル復元版(字幕版)

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