映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウォルター・サレス 監督「セントラル・ステーション」3566本目

だいぶ前に録画したのをやっと見ました。いい映画だなぁこれ。「シティ・オブ・ゴッド」や「モーターサイクル・ダイアリーズ」の監督なんだ。都会の大きな駅に集まってくる、今日一日食いつなぐことに精一杯の人たちの、生きるパワーがあふれる作品です。

元教師のオバサンは、子どもに「口紅くらいつけろよ」と言われるくらい、身なりも気にせず、若干インチキな”代書屋”をやって生計を立てています。元教師なのに、投函を請け負った手紙をそのまま引き出しに貯めてあったり、子どもを養子縁組業者に売ろうとしたり、なんだか悪いことばかりやっています。こういう清濁併せ持った大人たちの存在って、自分たちが小さい頃の「お母さんだって電話しながらご飯食べてるじゃないかー!」とか「動物園連れてってくれるって言ったのに嘘つきー!」みたいな、理不尽で理解できない大人の世界を見ているようで、新鮮です。こういう悪さのある大人が共感をもって描かれることって、ハリウッド映画でも日本映画でもあまりない気がします。

訪ねて行った彼らにすぐに声をかけて、しりとりやサッカーで仲良くなる青年たちの、人懐こさ。どこにいるかわからない父親の、帰ってくるという熱い手紙。人間と人間がみんな孤立しているようで、本当は心の中でがっしりと結びついている。人間ってほんとうは強いと思えて、なぜだか希望がもらえるような作品でした。

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