映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

デビッド・ロウリー 監督「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」3571本目

<結末にふれています>

これはきっと、「幽霊自身はどんな気持ちなんだろう」というのを想像して作ってみた作品なんだな。

愛する妻がいて、これからの人生を想像している男が突然命を絶たれた。彼女への思いが強すぎて、現世から魂が離れられない。彼女を追っていきたいけど魂なので家についてしまった。家には前から住んでる別の幽霊もいる。会話してみたりする。スペイン語を話す家族が住むようになって、かんしゃくを起こしてしまう。(それを生きている人間たちはポルターガイストと呼んだりする)ふとしたことで、妻が残して行ったメッセージを発見して、その瞬間、”成仏”する。

幽霊になってしまった後は、子どものハロウィンの仮装みたいなシーツを被っただけの姿。あんなにガタイがよかったのに。でも「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のときも書いたけど、ケイシー・アフレックって心に弱さを持つ、負担に耐えられない男の役が、はまる。彼なら突然の死を受け止められず、何世代も家のまわりをさまよってしまうかもしれない、と思える。

彼が最後に何を見たかも語られないし、そもそも、最初から最後までなんの説明もない。これは「彼」というひとりの幽霊の孤独を描いた作品なんだな、と思ったのでした。