映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジェームズ・ブリッジス 監督「チャイナ・シンドローム」3575本目

1979年のアメリカ映画。アメリカは開発当初から現在に至るまで、原子力に一番詳しい国ではあるけど、こんなに昔に、原発事故をここまで正確に予測した映画があったなんて驚く。正確さにも驚くけど、これを世に出す勇気もすごい。こういう映画を作り続けられるかぎり、アメリカって国はやっぱり強いと思う。全体的におおざっぱな国や、目の前のことには緻密だけど自然や”自分が予期しなかったこと”のような責任外のことには無頓着な国で、大事故が実際に起こるんだろうか。

ジェーン・フォンダが、”かわいこちゃん”と”社会派”のはざまのような役柄。こういう役、やりたったんだろうなぁ。(ロジェ・ヴァディムとは合わなくなるはずだ)ジャック・レモンは若い頃のスクリューボールコメディ(だっけ?時代が違う?)より「ミッシング」とかの癖があって重厚な役の印象が強くて、この映画でもど真ん中でがっちりと作品を支えて、持たせています。ジェーン・フォンダ記者も、(プロデューサーでもあるけど)マイケル・ダグラスのカメラマンも、事故の外側でくるくる動き回っている役割でしかないから。

歴史から人は学ばない、なぜなら生々しく記憶できる世代はすぐにいなくなってしまうから。映画からも学ばない。当事者に近い人ほど、絵空事だと思って見ていたのかもしれない。この映画を高く評価することは、その後の人間のおろかさを際立たせてしまうことでもあるように思えます。