映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランク・キャプラ監督「オペラ・ハット」3577本目

ある日突然、大富豪の遺産を相続したディーズは、最近の映画にはまるで出てこない、竹を割ったようなストレートな男。自分の善悪の物差しが一本すっと通っていて、判断したことはすぐにその場で口に出す。こんな甥がいれば私も遺産を残したいです。(※遺産があれば)

キャプラ作品は本当に、セリフが最高に面白い。特に、酩酊状態で帰宅した翌朝、彼が”忠実な召使い”と交わす、木で鼻をくくったような会話。それから、この頃の映画って主役が憎たらしい奴をスコーンと殴り倒したり、ヒロインがトップニュースのために芝居を打ったりという悪いこともやるのが、今見るとけっこう新鮮。どちらも「根はいいやつで、最後にはお互いに心を開く」という大きな展開があって大団円になるのですが、今って「いや、そうは言っても」みたいな、うがった見方がわりと大勢になってしまって、素直に映画を楽しむのって難しくなってしまった気もします。この頃は、作り手が観客の受け止める力、映画の真意を理解する力を、今より信用してたんじゃないかな。

1936年のアメリカってそういう世の中だったんだな・・・。

オペラハット(字幕版)

オペラハット(字幕版)

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